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平成18年度日中研究交流会
日中の野菜生産構造比較から地域格差問題を考える
 
  (財)農村開発企画委員会は、平成19年3月1日に虎ノ門パストラルにおいて日中研究交流会を開催いたしました。
  今回は、中国農村経済代表団2名、と研究交流委員2名及び荒川憲治氏(東京青果(株)野菜第1事業部長)、豊田育郎氏(農林水産省生産局野菜課長)、仲野隆三氏(富里市農業協同組合常務理事)に「日中の野菜生産構造比較から地域格差問題を考える」というテーマで、 報告していただきました。
 報告の概要は下記のとおりです。

■報告
  今村奈良臣氏 (東京大学名誉教授)
     「日中野菜産地交流の意義」

   政治的に民主主義を、経済学的には市場経済を前提にしながら農業構造改革を行うことは難しく、日本はそれで苦しんできた。中国でも同じことに直面している。当面する基本問題は、将来の中国農業を担うべき、市場経済に対応できる主体性を持った「農業経営者」をいかに創出するかにかかっている。そして、農民による主体性のある農民の組織化が、当面するいま一つの基本問題である。組織形態としては、地域に根ざした総合農協を育成することが望ましい。本来の望ましい農業経営は多様な食料や農産物を生産する地域の農業複合経営だからである。

 劉 志仁 氏(中国国務院参事・中国農業部農村経済研究中心学術委員会副主任)     「中国における野菜産業の現状と今後の展望」
   中国農業における野菜栽培の位置づけを栽培面積でみると食糧作物に次ぐ2位で、生産量と生産額は急増し、輸出も拡大している。このように中国野菜産業は非常に活力があるが、5つの問題点を抱えている。第1は小規模生産と大市場との矛盾である。第2は小規模生産と野菜の品質確保との矛盾である。第3は流通秩序が未成熟という問題である。第4は、農家労働力の農外流出による担い手の資質低下の問題である。第5は輸出拡大策と輸入国の農業保護との矛盾である。これらの問題を今後解決していく必要がある。

 劉 光明 氏 (中国農業部農村経済研究中心科研管理処・国際合作処処長) 
    「中国の野菜生産基盤」

   中国の農業労働力の特徴として、農業所得と教育水準が低いことがある。中国の賃金水準が低いことの最大の理由は、低所得の農民労働力が大量に存在しているからである。土地資源については、農地は農民に均分されるため、経営規模が小さい。こうした基盤のもと、近年、野菜生産が奨励されるようになったが、奨励のための政策的な措置はほとんどとられていない。特に、生産奨励金などの補助金を用いた奨励策が全く採られていない。また、輸出野菜についてのマーケティング政策も不足している。

 豊田育郎 氏 (農林水産省生産局野菜課長) 
    「野菜をめぐる情勢」

   日本では、野菜の生産は、カロリーベースでの食糧自給率への寄与度は小さいが、国民への健康、あるいは農業振興のうえで重要な作物になっている。しかし、野菜農業従事者の減少・高齢化によって、野菜の作付面積や生産量は減少している。他方、野菜の消費量も減少傾向にある。また、野菜のうち加工食品や外食を通じて提供されるものの比率が増えているが、価格や供給量の安定性の面から、加工・業務用需要は輸入依存率が高い。国産野菜振興を図るためには、価格や安定供給という面で、加工・業務用野菜需要に国内生産が応えていく必要がある。

 張 安明 氏 (農山漁村文化協会) 
    「中国長江デルタ地域の野菜生産・流通・消費動向」

   山東省のような大規模野菜産地の形成は、そこからの野菜の流入によって、長江デルタ地域の野菜産地にも大きな影響を与えている。長江デルタ地域でも野菜輸出が推進されているが、主要輸入国の安全基準が高まるにつれ、輸出野菜生産の形態は、農産物加工輸出企業の直営農場にシフトしており、零細農家の高齢者や女性などが排除されている。また、高品質野菜需要が伸びているにもかかわらず、域内にそれに応える仕組みが形成されていない。生産者手取り増加のため、零細農家の少量多品目高品質野菜生産を活かす組織化が必要である。

 仲野隆三 氏 (富里市農業協同組合常務理事) 
    「野菜産地における生産流通体制の整備と消費者との共同」

   富里市農協は、農家の出荷経費負担問題を解決するため、野菜の集出荷場の整備を進め、大型共販体制を整え、卸売市場重視の出荷を行ってきたが、予約相対取引などの広がりにより、卸売市場が価格の弾力性を失ったため、販売戦略の軌道修正を迫られた。そこで、1995年には加工卸産業との契約栽培を開始した。また、地産地消推進のため1996年には直売所を設置  した。さらに、量販店向けの野菜小分け作業や、量販店との取引契約によるインショップも展開するようになった。このように、野菜販売環境が激変する中、農協は多様な野菜販売に取り組む必要がある。

 荒川憲治 氏 (東京青果株式会社野菜第1事業部長) 
    「卸小売業にとっての国産野菜・輸入野菜それぞれのニーズと産地への要望」

   一定した量と価格による供給が求められる業務用野菜需要では、輸入野菜が優位に立っている。国内産地が業務加工筋の需要に応ずるには、価格や量を契約し、安定的な供給をしていく必要がある。他方、輸入野菜、特に中国産については、優れた品質のものも多いが、イメージはよくない。品質にふさわしいイメージを得るためには、努力が必要である。また、農薬の適正使用は日中の農業に共通する課題で、日本の農家もまだまだ意識が低い。なお、現在、野菜は過剰傾向にあると言われているが、中国では今後国内需要が増加すると考えられ、日本への輸出余力が小さくなっていく可能性にも留意しておく必要がある。

 谷口信和 氏 (東京大学大学院教授) 
    「日中野菜産地の共存にむけて」

   日本での最近の野菜輸入増加と国内生産の減少の関係の基本は、国内生産能力の後退が先行し、供給が不足するため輸入が増加するという関係である。担い手不足が最大の問題であり、構造問題が市場問題を引き起こしている。需要構造が中食・外食へシフトする中で、加工業務筋の需要に対応するには、ロットと安定供給確保のために、産地間競争よりも産地間提携が必要になる。また、生鮮野菜の流通が広域化する中で、地産地消の意義が高まっている。中国においても、食生活の構造が変化し、畜産物や野菜の需要が増加しつつある。また、農家労働力の流出もすすんできている。中国農業もまた、日本農業が直面する上記のような課題を内部に抱え込みつつある。

■研究交流会の模様






 
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